週末シンデレラ


少しだけ肩の力が抜ける。麻子もホッと息をついているのがわかった。

わたしがカシスオレンジを飲んでいると、一也さんはにっこりと笑って都筑係長の肩に腕を回した。

「大丈夫だよ、詩織ちゃん。征一郎は無表情だし、冷めた顔してるから、怒ってるように間違えられることが多いけど、案外気は長い奴なんだ」
「腕を回すな。暑苦しい」

都筑係長はうっとうしそうに一也さんの手を払いのけた。

係長のしかめた顔はやっぱり怒っているように見えるけど、一也さんに言わせれば、この表情も怒っていないということなのだろう。

「不器用な人……」
「は?」
「あっ……!」

係長を見ていて思ったことが、うっかり口から漏れてしまっていた。

慌てて口を押さえたけれど、係長には聞こえてしまったらしい。聞き返してくる瞳が鋭くて、わたしは反射的に身体をすくませた。

「え……や、べつになんでも……」

曖昧に言葉を濁していると、一也さんはやっと理解者を見つけたとでも言うように、ポンと手を打って、嬉しそうに笑った。

「そうなんだよ。征一郎はすごく不器用な奴で、誤解されやすいんだ。詩織ちゃん、よくわかったね。短時間なのに、もうコイツの性格見抜いたの?」
「い、いえ……都筑さんに似た雰囲気の上司がいて……」
「うわぁ……こんな上司いたらヤだね」
「なんだと?」

一也さんが苦い顔をして首を振ると、すかさず係長は彼を睨みつけた。

しかし、一也さんはそれに堪えることなく、テーブルから身を乗り出してわたしにたずねてくる。

「まぁまぁ。で、どんな上司なの?」
「えっ!? えぇっと……どんな上司と言われても……」

どんなって……今、一也さんを睨んでいる人ですよ!


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