週末シンデレラ


……なんて、言いたいけれど言えるはずもない。

まさかここまで一也さんの興味を惹いてしまうとは思わなかった。

細かいことは気にしないはずなのに、自分の友達と似ていると聞いて、興味がわいたのかもしれない。

……でも本当は“似ている”じゃなくて、“本人”なんだけど……。

わたしが戸惑っていると、個室の戸が開いて注文していた料理が運ばれてきた。水菜と大根のサラダや、新鮮なお刺身の盛り合わせなどがある。

「ほ、ほら、詩織の好きなサラダがきたよ。一也は唐揚げが好きだよね!」
「おっ、ありがと。で、どんな上司?」

麻子が話を逸らそうとしてくれたけれど、一也さんはどうしても気になるのか、目をキラキラさせて再びたずねてきた。

どうしよう……でも、これっていい機会なのかも。

係長の悪いところを言って、本人に気づかせることができれば、直してもらえるかもしれないし。

それに、ここにいる係長は、職場のときと違って怖くない。

わたしはゴクリと唾を飲み込み、喉から声を絞り出した。

「つ、都筑さんとはちょっと違うんですけど……ミスしたところがわかっているのに、どこか指摘せずに書類を返したり、残業していたら『電気代の無駄だから早く帰れ』って言ってきたり……厳しすぎて、優しさが感じられない人なんですよね。あ、都筑さんはそんなことありませんからっ」
「……」

い……言いすぎただろうか。

都筑係長はあごに手をあて、考えこむような仕草をとった。


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