週末シンデレラ
「へぇ、厳しい上司がいるんだな。征一郎はそんな風になるなよ」
「だ、大丈夫でしょ。都筑さんなら……」
なにも知らない一也さんを、麻子が慌ててフォローする。さっきから彼女にはハラハラさせっぱなしだ。
やがて、考えこんでいた都筑係長がゆっくりと口を開いた。
「……それは、上司がミスに気づかせようとしたんじゃないか?」
「え?」
「電気についても、きみを心配して早く帰らせようとしたんじゃないだろうか」
「わたしを心配……?」
そんな風に考えたことがなかった。
係長がわたしの心配をしてくれている……なんて、厳しい姿を知っているだけに、とてもじゃないけど思えるはずがない。
「で、でも……そんな言い方ありますか?」
「心配だから早く帰れ……とは、照れくさくて、なかなか言いづらいものだからな。それで意地の悪い言い方になったんじゃないかと思う」
「そんな……いくら照れくさくても、意地悪な人だって誤解されるよりストレートに言ったほうがよくないですか?」
「ああ、そうだろうな。だけど、ストレートに言うことができないんだから仕方がない。……少なくとも、俺なら意地悪な言い方しかできないな」
そうだったんだ……嫌味で言われているのだとばかり思っていたのに……。
「……ありがとうございます」
「それは、どういう礼だ?」
「あっ、いえ……都筑さんのおかげで、上司の気持ちが理解できたので」
心配してくれて……とは、言えるはずもない。
「そうか。それならよかった」
係長はニコリともせず、ビールをグイと飲み干した。