週末シンデレラ
……もったいない。
きちんと部下のことを考えて発言しているのに、意地悪な言い方しかできないから、係長の考えが今まで全然伝わっていなかった。
わたしも美穂も他の社員も、係長のことを、仕事はできるけど部下に厳しい人だという認識しかしていないと思う。
「……もったいないですよ、都筑さん」
「どういう意味だ?」
「都筑さん、本当は優しいのに……きっとわたしの上司みたいに、周りには難しい人だと誤解されています」
「なっ……俺が優しい? どうしてそうなるっ」
係長は口をへの字に曲げると、一也さんが注文していたビールを、横取りしてあおった。
「あっ、おい……俺が頼んだビール……」
「注文すればいいだろ」
「ひ……人のもの取っておいてなんだよ、それ!」
係長の無遠慮な物言いに、一也さんは驚いて目を瞬かせていた。
ど……どうしよう……。
褒めたつもりだったけど、調子に乗って言いすぎてしまったみたいだ。ついに怒らせてしまったかもしれない。
どうやってフォローをしようかとうろたえていると、店員にビールを注文し直した一也さんが、肘で係長の脇腹を小突いていた。
「わかった! 征一郎、優しいって言われて照れてんだろぉ」
「照れてないっ」
係長はしかめ面のまま、一也さんの肘を乱暴に払いのけた。