週末シンデレラ
「それじゃあ、わたしと一也はこっちの改札だから」
駅へ着くと、麻子は一也さんの腕を取って、わたしとはべつの改札を指差した。どうやら、今日はこのまま一也さんの家に泊まるらしい。
「うん、わたしは中央改札だから。今日は本当にありがとうございました」
「あっ……詩織ちゃん、待って」
「はい?」
三人にお礼を言い、中央改札へ向かおうとしたら、一也さんに引き止められた。
「たしか、征一郎も中央改札から電車に乗るよな。ホームまで送ってもらえば?」
「えっ……で、でも……都筑さんに悪いですし、ひとりで大丈夫ですから」
やっと係長と離れることができると思っていたのに。電車に乗るまで一緒なんて、いつまで気を張ってなくちゃいけないのか。
わたしは全力で首を振って、一也さんの提案を断った……が。
「一緒の改札へ向かうだけなんだから、悪いもなにもない」
「そ……そうですか……あ、ありがとうございます……っ」
係長がこんなに優しいなんて思わなかった。しかし、できればここは断ってほしかったけれど。
お礼を言うわたしの顔は、きっと引きつっていたと思う。麻子が心配そうにこちらを見てくるのがわかった。
「詩織……それじゃあ、わたしたち帰るけど、気をつけてね」
「うん……ありがとう」
麻子の“気をつけて”という言葉の裏には、きっと“バレないように”という意味が含まれているのだろう。
わたしがしっかりとうなずくと、麻子も深くうなずき返してくれた。
そして、係長にも別れの挨拶をすると、ふたりは改札の向こう側へと消えていった。