週末シンデレラ
おそらく、今日のわたしとのやり取りのことを言いたいのだろう。
『どうかしましたか?』
事情はなにもかも知っているけれど、こちらから言うわけにはいかない。
「……あれ、返信がこない」
たずねればすべて話してくれるだろう、とメールを返したが、係長からの返信はすぐにはこず、マグカップのコーヒーを一杯飲み干したころに届いた。
『お疲れさまと言ったら、部下が逃げるように帰った。なにか、間違ったのだろうか』
……部下っていうのは……わたしのこと、だよね?
「に、逃げるように……って……気にしてたんだ」
たしかに、動揺していたのでアタフタしながら事務室を出た。だけど、挨拶もしたし、逃げているつもりはなかった。
わたしが帰ったあと、係長は誰もいなくなった事務室で、そんなことをひとり悩んでいたのだろうか。
「なんか、申し訳ないことしちゃったな……」
わたしはコーヒーをもう一杯入れると、メールの文面を考えることにした。
逃げたわけじゃないとフォローしたいけど、詳しく状況が書かれていないので、“カオリ”としては余計なことを言えない。
「えーっと……『いつも言わないようなことを言ったんじゃないですか? それできっと、部下の人は驚いたんですよ』……っと。こんな感じかな」
メールを作成し終えたあと、何度か読み直してから送信する。係長からの返信は、二杯目のコーヒーを飲み終えたころに届いた。