聴かせて、天辺の青
「海棠さんが一番最初に面接に来た日のこと? 事務所の奥の倉庫の中で、海斗と一緒に居た時の?」
苛立ちが声になって出てしまう。
それが伝わったのか、彼が顔を曇らせた。
「違う、昨日の帰りに、アンタがまだ売り場で片付けしてる時だ。俺が更衣室に入ったら、外で話してる二人の声が聴こえたんだ」
更衣室の窓の向こうは海に面した細い通路になっていて、お客さんが通ることはまずない。ちょうど更衣室の窓の傍にベンチが一脚だけ置いてあって、私たち従業員が休憩時間に風に当たったり、たまに気分転換に使っている。
おそらく海斗と河村さんは、更衣室の窓が少し開いていたのに気付かないで話をしていたんだろう。
「更衣室の窓は開いてたの? 照明は点けなかったの?」
「ああ、少し開いて網戸になってた。まだ明るかったから照明は点けないで入ったけど、点けた方がよかったんだろうな」
うん、そう思う。
きっと照明が点いたなら二人は気がついて話さなかったはずだし、彼に話を聞かれることもなかったはず。
だけど彼が二人の関係を疑うような話って、どんな話をしていたんだろう。