聴かせて、天辺の青
思い出してしまうのは昨日の二人。お酒を飲み過ぎてトイレで取り乱した河村さんと、海斗の車の中に居た二人の影。
「海斗と河村さん、どんな話してたの?」
恐る恐る訊ねた。彼は首を傾げて、言葉を選んでいるようにも見える。
「いや、詳しくは分からないけど、藤本さんが一方的に河村さんに迫ってる感じだった。河村さんは困ってるっていうか……でも、藤本さんのことは好きみたいだった」
やっぱり、思っていたとおりだった。
海斗は昔から猪突猛進なところがある。河村さんに対する思いを諦めることも、秘めておくこともできなくて打ち明けてしまったんだ。
だけど河村さんは?
海斗のことを好きみたいっていうのは、海斗を傷つけないための言葉だったんだろうか。
「海棠さんは知らないのかもしれないけど、河村さんは結婚してて、旦那さんも子供さんもいるの。だから海斗を受け入れることなんて絶対にないと思う」
「じゃあ、河村さんが不倫してるんじゃないのか? どう見ても藤本さんのことを好きだって態度だったし、話してる後でキスしてたみたいだし」
彼はふいと目を逸らした。口に出して言ったものの、恥ずかしかったのかもしれない。