聴かせて、天辺の青


さて、海斗には何て訊ねたらいいんだろう。


私の悩みなんて放ったらかしで、彼は悠長にメニューを広げている。何か食べたいのなら、さっさと頼んだらいいじゃない。腹立たしさを込めて、思いきり大きな溜め息を吐き出す。


彼が顔を上げた。
もちろん、聴こえたのだろう。
聴こえるように吐いたのだから。


きょとんとした顔に笑みが浮かぶ。


「とりあえず、コーヒーでも飲もうか?」


言いたいことだけ言って、後のことを何にも考えてないみたいな顔。私が悩んでることぐらいわかってるくせに。


だけど、こんな風に彼が笑ったのを見たのは初めてかもしれない。


今までは何かが引っ掛かってるものを隠すような、いかにも作られた笑顔しか見せなかったのに。


どういうつもりで笑ったのか知らないけど、普通に笑えるんじゃない。


呆気に取られてるうちに彼は注文を済ませて、ドリンクコーナーでコーヒーを淹れて戻ってきた。


「はい、砂糖とミルクは? ここに置いておく。飲み放題みたいだから、テキトーにおかわりしなよ」


私の目の前に置かれたカップから、ふわりと香りが溢れてくる。


< 169 / 437 >

この作品をシェア

pagetop