聴かせて、天辺の青
「ありがとう」
一応、お礼だけは言っておくけど。ほっといてくれたら、自分の分ぐらい自分で淹れてくるのに。
それに、ドリンクバーだからといってもコーヒーばかり何杯も飲める訳ないでしょう? と言い返してやろうと思ったら、
「そんなにコーヒーばかり飲めないって? 今言おうと思った?」
先に言い返された。
「そんなこと、思ってない」
きっと睨み返すと、さっきと同じ笑顔を見せた彼はコーヒーをひと口含んで頬杖をついた。駐車場を眺める彼の横顔は、昨日のことなんて本当に忘れてしまっているようだ。
私にはまだ、彼に抱き締められた感覚が残っている。絶対に言わないけど。
カップを両手で包んで店内を見渡すと、隣に座っていた若い主婦たちは居なくなっていた。ピークの時間を過ぎたからか、店内にはぽつりぽつりと空席が見える。
「あのさ、ちょっと聞いてもいい?」
彼の声が、ずいぶん近くで聴こえた。
危うく手の中のカップを滑らせそうになって、ぐっと堪える。
駐車場を眺めていた彼が、テーブルに肘をついて身を乗り出すように私を見ている。すっかり笑顔は消えて、真剣な顔がすぐ目の前に迫ってる。
ちょっと待て。
もしかすると、ここからが本題?