聴かせて、天辺の青
「アンタは、ずっと、ここから出たことないの?」
何を聞くのかと思ったら、そんなこと。とくに興味を持つようなことでもないと思うのに、彼はテーブルに身を乗り出したまま、じっと私を見て答えを待ってる。
「あるよ、高校卒業して隣県の短大に入って、そのまま就職もしたけど辞めて、二年前に帰ってきた」
「へえ、出たことあったんだ。どうして隣県なの? 県内にも学校ぐらいあるだろ?」
「県内の市街地に出ていくのと隣県に出るのに時間は変わらないから、それに隣県の方が街は大きくて華やかだし、学校の数も多いし……」
「だったら、どうして東京に行かなかったの? 東京の方が選択肢は多いと思う。エイジは東京行ったんだろ? エイジと一緒に行けばよかったのに……」
彼の心無い言葉に、ぎゅっと胸が締め付けられる。同時に、無性に腹が立ってきた。
どうして、そんなことを彼に言われなきゃいけないの? 英司のことを何にも知らない彼に、言われたくない。英司の名前を口に出してほしくない。
「そんなの、あなたには関係ないでしょ? 英司のこと知らないくせに名前出すのやめて、あなたも結局は逃げてきたんでしょ」
口に出してから、しまったと思ったけど手遅れ。次々と溢れ出す言葉を止めることができなかった。
慌てて唇を噛んで、引き止める。これ以上、余計なことを言ってしまわないように。