本音は君が寝てから


「冷めてるからお代はいいです。コーヒーはいつものでいいですね?」


相本は手早く俺の食事を出すと、遠慮がちに厨房の方へ下がっていく。

どうやら気を使われたらしい。
お前はいいやつだ。これからもこの店をご贔屓にしてやるからな。


「ゴホン、じゃ悪いけど頂きます」


でも、あれほど待ち望んだ彼女といざ二人きりになると、何を話せばいいか分からない。

あれこれ悩みながら、とりあえず目の前のサンドを食べる。
店内は俺の咀嚼する音だけが響いて、妙に気まずい。


「あの。来てくれてありがとうございました」

「……え」


持っていたサンドも思わず落ちる。
俺は彼女をまじまじと見てしまった。

目は少し潤んでいる。
あまりに遅い俺に嫌気がさしていたんじゃないのか。


「相本さんのケーキ美味しいですね。私、チーズケーキをごちそうになりました」

「ああ、コイツのはなんでもうまいよ。ムースとかもオススメ」

「えー今度食べてみたいなぁ」


“今度は一緒に食べよう。”


誘い文句は思いつくのに何故ここで言えない、俺。

うまく会話を繋げられずただ目の前の皿を空にしていく俺に、彼女は一つ溜息をついた。

そうだよな。
呆れられてる。

遅く来た挙句に自分だけ飯食って。

あああ、何やってんだよ、俺。


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