幻影都市の亡霊
陽が落ち、なんともいえぬ薄陰った紫色の月が闇夜を照らす。
そこは、幻界でレーテス・フォゲット、現界でフォゲティアと呼ばれる大地だった。テント型の建物がぽつりぽつりと大地のいたるところに立っていて、仄かな明かりが灯っていた。集落の中心にある、ひときわ大きいその建物の脇で、木を組んで火をたいていた。そして建物に寄りかかるようにウェイン、ヨミ、セレコスの順で座っていて、向かい側にはアクエム、アルモが大きめの石を運んで座っていた。
「……」
ヨミは、暗い表情でうつむいていた。
「……」
それをまた無言で、ウェインは見つめていた。セレコスを見ると、彼は穏やかな表情で肯いた。アルモとアクエムは何も言わずに、煌々と燃える炎を眺めていた。その二人のそばにファムがいて、二人とじゃれていた。
「はぁ……」
ヨミがため息をついた。そして、顔を上げた。
「ごめんな、ウェイン、ふがいない導者で……」
「……」
ウェインはヨミの横顔を見つめた。
そして、複雑な気分になった。
俺には夢がある。そう、自身満々で言っていたヨミは、気に入らないながら、輝いていた。
ウェインには、どんな夢も、希望もなかった。持てなかった――どこか、羨ましかったのかもしれない。堂々と、夢を語れるこの亡霊が。
だが、今の彼は、気落ちして――自信の欠片も見れなかった。ツキミの攻撃の後、ウェインがああいうふうにヨミを罵倒したのは、この亡霊には揺るぎない自信があるものだと思い込んでいたからだった。何も持っていない、自分なんかの罵倒で――気落ちするなんて思っていなかったのだ。