幻影都市の亡霊
「今の奥さんといるのは安らげないか? ウィンレオ」
「彼女は俺をウィンレオと呼ばない。一亡霊ウィンレオでなく、亡霊王クロリスが、彼女の夫なんだ。俺はお前やヨミといるときくらいにしかウィンレオになれない」

 オーキッドは優しくその肩を叩いた。

「私はいつまでもお前の側にいてやるから。安心しろ。お前は自分を見失うことはない。ヨミだって、今にお前のことをウィンレオと呼ぶ。あれも随分皮が向けたからな。それにお前にはセレコスもいる」

 ウィンレオは困ったように笑った。

「セレコスときたら本当の風来坊でふらふらしてやがる。ちょっとは親父さんを見習って欲しいよな」
「まぁ、それはあいつの親父さんが立派過ぎた影響だろうよ。あれはあれでしっかりした奴だ」
「ヨミを亡霊にしたのもあいつだ。気まぐれもいいところだな」

 ウィンレオの言葉に、オークは首を横に振った。

「あれは気まぐれじゃない、ウィンレオ」
「それじゃあ、なんだ?」
「ヨミという存在がこの世から消滅するのを防いだんだ、要するに人命救助」

 ウィンレオも納得して肯いた。

「あいつは死のうとしてたわけか」
「死のうとしただけじゃない。あのままだったら心を悪魔に売ったかもしれない。あれほどの大きな器を持った人間だったんだ。悪魔のような亡霊に憑かれたら只事じゃなかっただろう。まして、あれほどの哀しみを抱いていたのだから……」

 ウィンレオはため息をついた。
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