幻影都市の亡霊
「あのように素敵な女性だ。俺なんかよりも相応しい男がいるはず。それに彼女が好意を抱いているというのも、愛ではなく、ただの好意なのだろうよ」
だいたい彼としては、あのような素直な人を堅苦しい王宮生活に巻き込みたくないという思いもあった。そう、第二妻となれば、あのプライドの高いソフラスがどう出るかが火を見るよりも明らかだったのだから。
ところが数日後、休養していたユークラフが突然体調を崩した。幸いただの風邪ですぐに良くなったのだが、あまりにも心配した様子のオーキッドを不審に思ったウィンレオは事情を聞いてみたのだった。
「……妹は病弱で、昔なんかは風邪を引いただけでも命に関わるほど弱かったんだ。だがしばらく会わないうちに大分良くなったんだな。心配した」
それから、ウィンレオとユークラフが顔を合わせることがいくらかあった。
ユークラフは朗らかで、春のような人だった。そしていろんな意味で、兄に似ている人だった。ウィンレオの顔見ると、さっと顔を赤らめて、晴れやかな笑顔を浮かべる。そんな彼女といると、本当に心が安らいだ。だが、彼女は頑なにウィンレオと呼ぶことを拒否するのだ。それがどこか、自分との間に一線を引くかれているようで、淋しい思いもした。
王宮の庭でユークラフがベンチに腰掛けて、オーキッドとヨミの術の練習を眺めていると、その隣にウィンレオが腰掛けた。ユークラフはやはり照れたように顔を赤らめ、会釈する。
「このように何度も王宮内をふらついてもよろしいのですの?」
ウィンレオは笑って、
「本当は良くない」
その言葉にユークラフはくすくす笑った。ユークラフも、この男に明らかに惹かれていた。
ウィンレオは立派な男だった。魅力的な男でもあった。
ユークラフはこのような男に出会ったことなどなかった。だからこそ、自分が近づきすぎて、男に嫌われるのを畏れていた。一線を超えてしまうと、全てが壊れてしまいそうで、とても怖かった。
だいたい彼としては、あのような素直な人を堅苦しい王宮生活に巻き込みたくないという思いもあった。そう、第二妻となれば、あのプライドの高いソフラスがどう出るかが火を見るよりも明らかだったのだから。
ところが数日後、休養していたユークラフが突然体調を崩した。幸いただの風邪ですぐに良くなったのだが、あまりにも心配した様子のオーキッドを不審に思ったウィンレオは事情を聞いてみたのだった。
「……妹は病弱で、昔なんかは風邪を引いただけでも命に関わるほど弱かったんだ。だがしばらく会わないうちに大分良くなったんだな。心配した」
それから、ウィンレオとユークラフが顔を合わせることがいくらかあった。
ユークラフは朗らかで、春のような人だった。そしていろんな意味で、兄に似ている人だった。ウィンレオの顔見ると、さっと顔を赤らめて、晴れやかな笑顔を浮かべる。そんな彼女といると、本当に心が安らいだ。だが、彼女は頑なにウィンレオと呼ぶことを拒否するのだ。それがどこか、自分との間に一線を引くかれているようで、淋しい思いもした。
王宮の庭でユークラフがベンチに腰掛けて、オーキッドとヨミの術の練習を眺めていると、その隣にウィンレオが腰掛けた。ユークラフはやはり照れたように顔を赤らめ、会釈する。
「このように何度も王宮内をふらついてもよろしいのですの?」
ウィンレオは笑って、
「本当は良くない」
その言葉にユークラフはくすくす笑った。ユークラフも、この男に明らかに惹かれていた。
ウィンレオは立派な男だった。魅力的な男でもあった。
ユークラフはこのような男に出会ったことなどなかった。だからこそ、自分が近づきすぎて、男に嫌われるのを畏れていた。一線を超えてしまうと、全てが壊れてしまいそうで、とても怖かった。