いとしいあなたに幸福を
妹はすっかり見透かしているかのように、悠梨を窘(たしな)めた。

次いで、身を起こすと周と陽司に向かって深々と頭を下げる。

「お二人共、助けてくださって本当にありがとうございます」

ほら、お兄ちゃんも、と促され、悠梨は慌てて頭を垂れた。

「ど、どういたしまして。えーと、まあ…元気になって安心したよ」

周は戸惑ったように頭を掻きながらも、その言葉通り安堵の笑顔を浮かべた。

そんな周に対して、妹は少し恥ずかしそうに頬を赤らめた気がする。

「――若様!こちらにいらしたんですの」

急に廊下のほうが騒がしくなったと思ったら、愛梨と同じか少し上くらいの少女が駆け込んできた。

「なんだ、美月?病人がいるんだぞ」

少々きつい口調で諫められた少女は、肩で息をしながら周に向かって跪いた。

「も、申し訳ございません…!ですが奥様が、厘様がお倒れになられて…!!」

「っ!!」

その瞬間、周の表情が凍り付いた。

そして傍らに立つ悠梨にだけ辛うじて聞き取れる程小さな声で、母さん、と呟いた。

「恐らくご病状が悪化されたのかと…譫言のように周様を呼ばれていらっしゃいますわ、お早く…!!」

周は小さく頷くと、呆然としたままの陽司を振り返った。

「陽司、残って悠梨の話を聞いてやってくれ、何かあったらすぐ知らせろ。俺も状況が解り次第、連絡する」
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