いとしいこどもたちに祝福を【後編】
陸と対を成すような力を持つ魔導士の青年。

記憶を奪われて何も知らなかった陸に対して、何もかも見透かしているかのような香也。

陸があんなに怒ったのは、風弓の言う一族上の対立のせいもあったのだろうか。

「…姉ちゃん、香也のことが気になるのか」

「うっ、ううん。ただ、昨日言われたことが気になって…」

「多分あいつは姉ちゃんを困らせようとしてるだけだよ、余り気にしないほうがいいぜ」

「うん…」

香也の真意が、解らない。

本当に風弓の言う通りだろうか。

時計塔や中庭でふとした瞬間に見せた優しげな表情や言葉は、単に自分を動揺させるためのものか――

「……そういや姉ちゃん、自分の思ってることあんまり口に出さなくなったよな」

「えっ…」

「子供の頃は引っ込み思案だけど意思表示は結構はっきりしてたよ。だけど最近の姉ちゃんは…色々、我慢してるように見える」

「…我慢?」

そんな自覚はなかったためきょとんとしていると、風弓は小さく息を吐いた。

「いや…そうさせたのは、苦労させたのは俺や親父がいなくなったせいだよな。母ちゃんも働き出したりして、大変だったみたいだし…」

「そんな…二人のせいじゃないよ」

充と風弓がいなくなって寂しい想いこそしたが、二人は何も悪くない。
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