いとしいこどもたちに祝福を【後編】
「昔な、姉ちゃんは自分の意思で能力を使おうとして死に掛けたんだ。俺が川辺で力を使って見せたせいで、その真似をしようとした弾みで大きな発作を起こして……川に落ちた」

晴海が極端に水を怖がるようになったのは、それからだった。

「それで、あのとき…」

そう、炎夏で必要以上に気が動転していたのはそのせいだ。

まさか、晴海を二度も自分のせいで溺れさせてしまうなんて夢にも思わなかったから。

「だからな、陸。本当に俺には、お前を責める資格なんてないんだ。陸を逃がしたのは親父の意思だし、お前のせいじゃないよ」

陸はいつだって晴海や自分のために尽力してくれた。

寧(むし)ろ陸のほうが月虹行きを免れた晴海とは真逆に、月虹から付け狙われる対象となってしまったのに。

「十年前、陸は姉ちゃんや親父と逢ってたのか」

「うん…充さん、多分俺のことを覚えててくれてたんだな。だから月虹で俺のことを気に掛けてくれたんだ」

父は、そのことについて自分には何も言っていなかった。

陸と面識があること、月虹から陸を逃がそうとしていること、そして月虹から陸を逃がした真意。

晴海の命の恩人の息子が、まるで姉の身代わりのように月虹に囚われているのを、見過ごせなかったのかも知れない。

「……ん?」

――ふと俯いた瞬間、足元に小さな乳白色の珠飾りが落ちているのを見付けた。

何となく見覚えがあり拾い上げてみると、それはごく淡い紅色を帯びた真珠で、紐を通すための穴が空いていた。

辺りを見回すと、同じような真珠が水浸しになった床のあちこちに散らばっている。

「これって、姉ちゃんの…」
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