いとしいこどもたちに祝福を【後編】
「……だからね、だっこ…してほしいの」

「う、あ……うん…」

こちらは真剣に焦っているのに、愛梨は微笑ましいものを見守るかのようにくすくすと笑っている。

「は…晴、おいで」

軽く両腕を広げて呼び掛けると、晴海は嬉しそうに思い切り抱き付いてきた。

元々家族に可愛がられて育った身としては、こうして触れ合うこと自体に抵抗はないのだが。

今までこちらから触れたり抱き寄せたりするだけで頬を真っ赤にしていた晴海が、ましてや今の状態の彼女が自ら擦り寄ってくるのは意外でしかなかった。

「……りっくんて、あいりさんとにてるにおいがするね」

「に、匂いっ…?」

胸元に顔を埋(うず)められ、嬉しいような恥ずかしいような妙な気分になる。

「うん…わたし、りっくんのにおい、すき」

可愛いな、なんて思ってふと頭をやんわり撫でてやると、晴海は気持ち良さそうにゆっくりと瞬きをした。

(何か…仔猫とか仔兔とか、小動物に懐かれたみたいな気分だな…)

忘れられてしまったと判ったときはかなり切ない気持ちに陥ったが、こんなにも素直に甘えてくれるならこれはこれでいいような気もしてきた。

しかし一度警戒が解けるとこれ程まで気を許してしまうとなるなら、それも色々な意味で心配である。

「おい、陸」

「あ。そういえばいたのか風弓」

先程とは立場が逆転した風弓は、少々苛立ったように陸をねめ付けた。
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