いとしいこどもたちに祝福を【後編】
その何かを口にされる前に、京はゆっくりと首を振った。

『輝琉様…申し訳ありませんが、私も父と同意見ですので。何度問われても同じ返答以外は致しかねます』

『ほっほ。霊奈殿も兄君も、随分あの次男坊を出し惜しみするのう』

輝琉は然して困った様子も見せず、愉しげに笑って見せる。

(…俺を、出し惜しみ?)

『京、そんな強気でいられるのも今のうちだぞ?』

更に、再び占部が会話に口を挟んできた。

その顔には得意気で嫌味な笑顔が浮かんでいる。

『伯父上、どういう意味です』

京は無表情のまま占部をねめつけた。

『今の春雷など、輝琉様の黎明と我が秋雨との前では恐るるに足らず、ということだ。これ以上我々の申し出を拒むなら我々にも考えがある』

嫌な予感がする。

申し出、というのは同盟を結べという交渉のことであろう。

そこに何故、その場に居もしない自分の名前が出てくるのか。

輝琉と占部は一体、何を要求しようとしている――?

『では訊こう。我が黎明・秋雨と手を結び、薄暮の陰謀を挫く力と成れ。さもなくば我々は武力にて春雷を屈伏させることと決めた』

『…!!』

(春雷を相手に、戦争を仕掛ける!?)
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