いとしいこどもたちに祝福を【後編】
馬鹿な、戦争を始めるとなればいくら黎明や秋雨だってただでは済まない。
薄暮への対処すら儘ならなくなるどころか、向こうに隙を突かれる可能性がある――何故春雷が今日まで独立国の地位を保てているか、輝琉たちも知らない筈はない。
それに何より“春雷は戦争に荷担しない”と言っていた、周の意思に反する。
『春雷の優れた霊媒師たちを相手取るは確かに手強い。それはわしも占部殿も、重々承知しておるよ。だがそれは平時であればの話だ』
『周殿が不調の今、戦を起こすとなれば彼らを統括するのは京…お前だな。跡取りとはいえ、果たしてお前は彼らを周殿と同じように纏め切れるかな?』
『まあ病状は幸い軽いらしいから、要らぬ心配のようだが…もし霊奈殿が奥方同様、長期間目覚めぬようなことがあれば不安はすぐ伝染するし、皆の士気にも関わるしのう』
『…っ!そんな、ことは…』
(…!!くそっ、母さんのときとは全然状況が違うんだ…!そんなことあって堪るかっ…!)
頭ではそう思っていても、もしかしたら――密かに抱いていた不安を見透かすような輝琉の発言を受け、否が応にも心が揺れる。
京も平静を装ってはいるが、徐々に焦りが見え始めている。
周が動けないことを知られれば、それを理由に付け入られる――京が恐れていたことはこのことだ。
『のう、賢明なそなたならば理解出来ておろう?我々とて、穏便に話を進められるに越したことはない。わしの提案を全て呑んでくれれば、こんな物騒な話なぞせずに済む』
『……全て、ですか』
輝琉からの要求はやはり、先程の薄暮相手の戦争に協力する話だけではないのか――
『何も其処まで難しい話ではあるまい?我が黎明と同盟を結び、その証としてあの弟御をわしの娘婿に譲ってくれれば良いだけだ』
(…?!)
『実に良いお話だろう、京?あの弟めを栄(は)えある輝琉様の一族に加えて頂けるという身に余る栄誉を頂けるんだぞ?周殿は何故こんな良いお話を無下にしてしまったのやら…』
取り敢えず占部は黙っていて欲しい。
薄暮への対処すら儘ならなくなるどころか、向こうに隙を突かれる可能性がある――何故春雷が今日まで独立国の地位を保てているか、輝琉たちも知らない筈はない。
それに何より“春雷は戦争に荷担しない”と言っていた、周の意思に反する。
『春雷の優れた霊媒師たちを相手取るは確かに手強い。それはわしも占部殿も、重々承知しておるよ。だがそれは平時であればの話だ』
『周殿が不調の今、戦を起こすとなれば彼らを統括するのは京…お前だな。跡取りとはいえ、果たしてお前は彼らを周殿と同じように纏め切れるかな?』
『まあ病状は幸い軽いらしいから、要らぬ心配のようだが…もし霊奈殿が奥方同様、長期間目覚めぬようなことがあれば不安はすぐ伝染するし、皆の士気にも関わるしのう』
『…っ!そんな、ことは…』
(…!!くそっ、母さんのときとは全然状況が違うんだ…!そんなことあって堪るかっ…!)
頭ではそう思っていても、もしかしたら――密かに抱いていた不安を見透かすような輝琉の発言を受け、否が応にも心が揺れる。
京も平静を装ってはいるが、徐々に焦りが見え始めている。
周が動けないことを知られれば、それを理由に付け入られる――京が恐れていたことはこのことだ。
『のう、賢明なそなたならば理解出来ておろう?我々とて、穏便に話を進められるに越したことはない。わしの提案を全て呑んでくれれば、こんな物騒な話なぞせずに済む』
『……全て、ですか』
輝琉からの要求はやはり、先程の薄暮相手の戦争に協力する話だけではないのか――
『何も其処まで難しい話ではあるまい?我が黎明と同盟を結び、その証としてあの弟御をわしの娘婿に譲ってくれれば良いだけだ』
(…?!)
『実に良いお話だろう、京?あの弟めを栄(は)えある輝琉様の一族に加えて頂けるという身に余る栄誉を頂けるんだぞ?周殿は何故こんな良いお話を無下にしてしまったのやら…』
取り敢えず占部は黙っていて欲しい。