いとしいこどもたちに祝福を【後編】
『霊奈殿もそなたも、次男坊を家の正統な一員と認めるならばそれ相応の覚悟をさせて然るべきであろう?単に甘やかすだけでは弟御のためにならぬぞ?』
京は何か言いたげに口を開きかけたが、躊躇して結局何も言わなかった。
恐らく自分には既に大切な存在がいることを示そうとしてくれたのだろうが、輝琉はこちらにどんな事情があろうとも力ずくで引き離すつもりだ。
『そもそも薄暮と戦うことに何を躊躇う?そなたが母と慕う現奥方の一族を絶滅寸前まで追い詰めたのは、あの架々見だと言われておる。そなたも弟御も、母の無念を晴らしてやりたくはないのか?』
輝琉からの追及に、京は伏し目がちに小さく返答した。
『……少し時間を頂けますか』
『ああ、勿論だ。我々はそなたらを困らせたいのではなく、協力して欲しいのだからな。弟御とよぉく話し合って決めておくれ』
『私とて自慢の義弟や可愛い甥の国に攻め入りたくはない。京、お前なら正しい答えを導き出してくれると信じているよ』
輝琉は勝ち誇った笑みを浮かべると、悠然として立ち上がった。
『さてと…今日のところはこれでお暇(いとま)しようかの。お父君にはくれぐれも自愛されるよう伝えてくれるかの』
『…お気遣い、痛み入ります』
京は取り急ぎ笑顔を作って見せたが、その表情には余裕がなかった。
――輝琉と占部を陽司に見送らせ、京は一人室内に残された瞬間、不意に握り締めた拳を壁に打ち付ける。
『…くそっ!!』
こんなに荒々しい兄の姿を、陸は見たことがない。
思いも寄らなかった兄の苛立った姿に、輝琉の口から戦争の話を持ち掛けられたとき以上に酷く動揺してしまった。
京は、暫く俯いたまま微動だにしなかったが、ふと顔を上げて視えない筈のこちらを振り向いた。
『…陸。視てるんだろ?』
京は何か言いたげに口を開きかけたが、躊躇して結局何も言わなかった。
恐らく自分には既に大切な存在がいることを示そうとしてくれたのだろうが、輝琉はこちらにどんな事情があろうとも力ずくで引き離すつもりだ。
『そもそも薄暮と戦うことに何を躊躇う?そなたが母と慕う現奥方の一族を絶滅寸前まで追い詰めたのは、あの架々見だと言われておる。そなたも弟御も、母の無念を晴らしてやりたくはないのか?』
輝琉からの追及に、京は伏し目がちに小さく返答した。
『……少し時間を頂けますか』
『ああ、勿論だ。我々はそなたらを困らせたいのではなく、協力して欲しいのだからな。弟御とよぉく話し合って決めておくれ』
『私とて自慢の義弟や可愛い甥の国に攻め入りたくはない。京、お前なら正しい答えを導き出してくれると信じているよ』
輝琉は勝ち誇った笑みを浮かべると、悠然として立ち上がった。
『さてと…今日のところはこれでお暇(いとま)しようかの。お父君にはくれぐれも自愛されるよう伝えてくれるかの』
『…お気遣い、痛み入ります』
京は取り急ぎ笑顔を作って見せたが、その表情には余裕がなかった。
――輝琉と占部を陽司に見送らせ、京は一人室内に残された瞬間、不意に握り締めた拳を壁に打ち付ける。
『…くそっ!!』
こんなに荒々しい兄の姿を、陸は見たことがない。
思いも寄らなかった兄の苛立った姿に、輝琉の口から戦争の話を持ち掛けられたとき以上に酷く動揺してしまった。
京は、暫く俯いたまま微動だにしなかったが、ふと顔を上げて視えない筈のこちらを振り向いた。
『…陸。視てるんだろ?』