いとしいこどもたちに祝福を【後編】
「同じ領主の息子でも、無理矢理あの馬鹿息子の嫁にさせられたりしなくて良かった。はるが幸せになれる相手なら、母ちゃんはそれだけで十分だ」

「母さん」

「いや…誰でもいいみたいな言い方は良くないね。陸みたいにあんたを大切にしてくれる優しい子がはるの相手で、あたしも嬉しい」

思えば炎夏で一緒に暮らしていたときから、仄は陸を甚(いた)く気に入っていた。

自分の恋心など簡単に見抜かれていたのだろうが、陸にも好意的だったのは何故だろう。

「そういえば母さんは…どうして最初から陸のことを信じてくれたの?陸が何処の誰だか…何処から来たのか、知ってたの?」

「いや?陸のことは何も知らなかったよ。まあ、見た目で春雷出身かなってくらいの認識はしてたけどさ。領主の息子だって知ったときは素直に驚いたし」

「じゃあ、どうして…」

「ろくな詮索もせずに陸をうちに置いたかって?」

今思えば、母は全てを見通していたのではないかと思えた。

だから陸が何か話そうとしても、すぐはぐらかしたりしていたのではないかと――

「…陸は、あたしの大事な娘を助けてくれたからだよ」

「!私…?」

仄はふと憂いを含んだ表情で、晴海の髪を優しく撫でた。

「母ちゃんはな、こう見えて実は心配性の臆病者なんだ」

そう告げて、可笑しかったのか仄は自嘲げに鼻で笑った。

「充とふゆと離れ離れになって、もしその上はるにまで何かあったらって思うと…あたしはいつも怖くて仕方なかった」

だから晴海をあまり外に出したくなくて、家事を任せて自分が働くことにしたのだと仄は言った。
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