いとしいこどもたちに祝福を【後編】
――いつも母が、自分には暗い表情を見せないよう陽気に振舞っていることを晴海は知っている。
そのため、晴海に対して母がこんなことを言うのは本当に珍しいことだった。
「だから、あんな酷い怪我なのにあの馬鹿息子からはるを守ってくれた陸を、何とか助けたかったんだよ」
「…母さん」
――あの日、陸と出逢った顛末を母に話したときのことをふと思い出す。
秦に乱暴され掛けた旨は、自分も余り気が進まず詳しくは触れなかったのだが、その話に及んだ瞬間にやはり仄は表情を強張らせた。
だが晴海に気を遣わせまいとしたのか、すぐに険しい顔付きを隠していつものように笑ったのだ。
『…あの陸って子が助けてくれたお陰で、未遂だったなら良かったよ。本当に……陸が目を覚ましたら、もう一度きちんと何かお礼をしなきゃなあ』
陸が助けてくれたことの印象のほうが鮮烈過ぎて、自分も然程気に止めていなかったが――あのときは本当に危なかったのだと改めて思い返す。
後から話を聞かされた仄からすれば、嫌悪と安堵が入り交じった感情の昂りは当事者の晴海以上だったのかも知れない。
「…有難う、母さん。あのとき、陸をうちに引き留めてくれて」
「どう致しまして」
あのまま陸を行かせてしまったらどうなっていたのだろう。
自分の能力のことも、父や風弓が生きていることも知らず、幼い頃陸と出逢い約束を交わしたことも忘れたまま暮らしていたのか。
それを思うと、ぞっとした。
「それに、もし目を覚ました陸が話してみてふざけた性格だったりしたら即追い出してやってたし」
その必要もなかったよ、と仄は明るく笑う。
「だって最初に言ったじゃない、陸はそんなことしないって」
そのため、晴海に対して母がこんなことを言うのは本当に珍しいことだった。
「だから、あんな酷い怪我なのにあの馬鹿息子からはるを守ってくれた陸を、何とか助けたかったんだよ」
「…母さん」
――あの日、陸と出逢った顛末を母に話したときのことをふと思い出す。
秦に乱暴され掛けた旨は、自分も余り気が進まず詳しくは触れなかったのだが、その話に及んだ瞬間にやはり仄は表情を強張らせた。
だが晴海に気を遣わせまいとしたのか、すぐに険しい顔付きを隠していつものように笑ったのだ。
『…あの陸って子が助けてくれたお陰で、未遂だったなら良かったよ。本当に……陸が目を覚ましたら、もう一度きちんと何かお礼をしなきゃなあ』
陸が助けてくれたことの印象のほうが鮮烈過ぎて、自分も然程気に止めていなかったが――あのときは本当に危なかったのだと改めて思い返す。
後から話を聞かされた仄からすれば、嫌悪と安堵が入り交じった感情の昂りは当事者の晴海以上だったのかも知れない。
「…有難う、母さん。あのとき、陸をうちに引き留めてくれて」
「どう致しまして」
あのまま陸を行かせてしまったらどうなっていたのだろう。
自分の能力のことも、父や風弓が生きていることも知らず、幼い頃陸と出逢い約束を交わしたことも忘れたまま暮らしていたのか。
それを思うと、ぞっとした。
「それに、もし目を覚ました陸が話してみてふざけた性格だったりしたら即追い出してやってたし」
その必要もなかったよ、と仄は明るく笑う。
「だって最初に言ったじゃない、陸はそんなことしないって」