いとしいこどもたちに祝福を【後編】
「…一つ、気掛かりなことがある。陸、四年前にお前を初めとした能力者たちを、月虹へ連れてきたのが誰だか覚えてるか」

「…丞(たすく)のこと、か?」

丞――初めて耳にする名だが、陸は何か思い出したように眉を顰めた。

「そうだ。月虹の能力者の中では最も古株の、闇の能力者――丞は月虹が設立された当初から如月の手駒として動いてる。奴はどうも得体が知れなくてな」

「俺も、丞の闇魔法は苦手だけど…あいつと晴の能力とに、何の関係があるんだ?」

「…如月は元々、万能の能力者を造ることを目的としている。それこそ晴海のような全ての精霊魔法を扱える能力者を、な」

以前、茜と葵が話してくれたことと同じだ――

「…だから父さんに協力させて、陸や貴方の力を調べてたの?」

「ああ…才臥は結局、そんな能力者を造るのは無理だと結論付けたようだがな。如月は諦め切れず、近いうちに闇魔法の特性を利用した研究を始めるつもりだよ」

「他者の魔力を吸収する、闇魔法の特性…その実験に丞を使う気なのか。でもそんなの、成功する可能性のほうが低いんじゃないか?」

「確率だけ見ればな。だが万が一にも成功すれば、たとえ俺やお前でも元々強力な闇魔法を扱う丞に太刀打ちするのは難儀だ。素質のない奴に他属性の魔力を注ぐ実験よりかは、幾分現実的でもあるしな」

「…!もし実験が成功しても、晴の力なら対抗出来るって言いたいのか」

「そうだな」

抑揚なく答えた香也に、陸は大きく首を振って見せた。

「駄目だ、晴に能力を使わせる訳には行かない…!」

――天地の見立てに依ると、心臓の病は負担を与えていた能力が長年抑えられていたお陰で小康状態であるものの、やはり完治はしていないらしい。

先日病院で起こした能力の暴走の際に発作を起こさなかったのも、偶然運が良かっただけだという。

つまり、能力を使えば持病の発作はいつ誘発されてもおかしくない状況――場合に依っては命に関わる危険があると警告された。
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