いとしいこどもたちに祝福を【後編】
「お前のほうは、黎明と秋雨を何とかしておけ。この時期に戦争なんざ始められたら、お互い晴海を守る余裕なんてなくなるぜ」

「…解ってる」

黎明と秋雨との話はまだ打開案が出ていないため、陸も少々不安げに頷いていた。

「ったく、黎明の物好き爺も余計なことばっかしやがって…うちの伯父貴のが随分ましだぜ」

香也は独り言のつもりで小さくぽつりと呟いたようだが、それを聞いた瞬間陸がくすりと吹き出した。

「…んだよ」

「いや…お前、香住さんのことは結構信頼してるんだなと思って」

香住――冬霞の国の領主であり、香也の伯父に当たる人物だとは陸から聞いている。

陸の言葉を受け、香也は少々ばつが悪そうに舌打ちをした。

「…お前みたいな温室育ちには解らんだろうがな、伯父貴はあの曲者揃いの一族を取り纏められるだけあるよ。同世代の輝琉なんぞ、比べ物にもならないぜ」

「うん…とても話の分かる方だった。だからお前も俺を香住さんの元へ行かせたし、信頼して沙也さんを任せてるんだろ」

「…!なっ…」

「沙也、さん?」

聞き慣れない人物の名前に思わず首を傾げると、香也は珍しく狼狽えた様子で眼を泳がせた。

「陸、沙也さんって…?」

「ああ…香也の、お母さんのことだよ。俺、冬霞で逢ってるんだ」

成程――流石の香也も慌てる訳だ。

滅多に見られない香也の失態に、陸も少々悪戯心が芽生えたのかくすりと笑みを零した。
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