君に届ける物語
『くじけちゃいそうな時もあったけど、あなたに届けてもらえてよかったです。あなたが一緒に落胆してくれるから待ってるのも苦じゃなかった』


まだ少し辛そうに笑う君と交わした言葉で、僕は暖かい気持ちになる。


『ありがとうございました』


お礼を言うのは僕の方だ。

僕を待っていてくれたわけじゃないのは分かっているけれど、

それでも君の顔を見るとほっとしたんだ。


『メモもうれしかった。あなたの名前、1年目にして初めて知りました』

『あ、名前。すみません』


ああ、そうか。

僕は名乗ってすらいなかったんだ。

それでよく僕を待っていてくれたものだ。

僕らは目が合うと噴き出すように笑っていた。


『また、メモ入れてもいいですか?』


自然と僕はそうたずねていた。


『今度は誰から届いたものなのか分かりますね!』 


楽しみにしています。

その言葉に送られて僕はまた別の家に配達に行く。

“君のことを知りたいです”

少しずつ、君に僕の気持ちを届けていこうと思う。

君に届けるこの物語は、始まったばかりだから。
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