君想歌
くるりと栄太郎と目を
合わせること無く歩き出した
和泉の腕は冷たい手に掴まれる。


「何で逃げるの?」


「関わらないで。私は新選組。
栄太郎も斬っちゃうかもよ?」


前を向いたまま言う和泉の腕を
益々強く栄太郎は握る。


「駄目だね。全っ然、駄目」


栄太郎は呆れたように言う。

ぱしゃぱしゃと水が跳ねる音が
後ろから移動して顔の下まで
下げられた和泉の番傘を
指であげた。


「やっぱり……ね」


番傘の柄を握る右手は
力の入れすぎで白くなっている。


「和泉は人との関係を広げるのを
恐れてる」


真っ直ぐに和泉の瞳を
見つめてくる栄太郎を見れない。


「和泉。逃げちゃ駄目だよ?」


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