君想歌
色とりどりの金平糖の中から
一つ、手に取ると口に入れる。

「ね、働く場所無くなったら。
雇ってくれたりする?」


「どうしたん。いきなり?」

涙を拭いてもなお、赤くなった
瞳は和泉を怪訝そうに写した。

「刀、使えなくなってる」


「え……?」


和泉の口から吐き出された
衝撃の事実は明里を固まらせた。


「最近使ってなかったから
分からないけど。
たぶん稔麿殺してから」


刀を抜けば。

鈍く光る剣身を見ただけで
動けなくなってしまう。


「居場所、無くなっちゃうな…」

刀も使えない人間を。

組が必要とするはずが無い。


事実が露見すれば遅かれ早かれ
組を和泉は脱けるつもりだった。


.
< 559 / 633 >

この作品をシェア

pagetop