君想歌
和泉の流れに乗せられかけた
明里。

だが和泉は女、なのだ。

「それとこれは別や」


ぺちりと手の甲を叩かれ
和泉は口をへの字に曲げた。


「明里のケチ」

「何とでも言い。
うちが和泉に女らしさ教えな
誰が教えるん?
吉田はんに怒られてまうわ」


最後に付け足された
嫌われるで、との言葉。


嫌だ、とはっきり書いてある
顔にぷっと明里は吹き出した。

「和泉お姉ちゃーん」

「うわー!!」

襖も閉めずに一人で居るのが
耐えられなかった綾が和泉に
飛び込んできた。


「懐いてしもうた」


何事もなかったかのように
お茶を飲む明里の視線の先には
綾に抱き付かれひっくり返った
和泉の姿があった。


.
< 562 / 633 >

この作品をシェア

pagetop