社内恋愛なんて
 どうして、こんな時に。


守もこんな所で私と会って驚いているようだった。


私を見上げて、人懐っこい笑顔を作る。この笑顔が好きだった。


でも今は……。


「みあ、久しぶり。あのさ……」


「ごめん、急いでるの!」


 話を聞いていたら、部長は帰ってしまう。


私は再びヒールの音を響かせて階段を駆け下りた。


本当に急いでいる様子の私に、守は呆気に取られていた。


「お、おう! また今度な。転ぶなよ~!」


 後ろから呑気な守の声がする。


私はその声を払いのけるように、更に急いで駆け下りる。


もう、守の呪縛から逃れたい。


過去に怯えるのは嫌だ。


 変わりたい。幸せになりたい。


 部長、お願い、まだ帰らないで……。


 地下駐車場の分厚い扉を押し開ける。


 部長の車……どこ? 


首を回して左右を見渡す。


息切れして胸がドクドクいっている。


見渡すも、部長の車は見つからなくて、遅かったのかと肩を落としたその時だった。
 
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