社内恋愛なんて
「部長、大丈夫だったんですか?」


「何が?」


 きょとんとした顔で逆に質問されて戸惑う。


「怒られたんでしょう? 

私と駐車場であんなことしてたから……。

もしかして、出世とかに響くんですか? 

私のせいで、どうしよう」


 うろたえる私に、部長は「待て待て」と制した。


「怒られていたわけじゃない。

ただまあ……やっぱり場所が悪かったから注意を受けただけだ。

あそこは社長も使っているから。

でも、呼び出しされたのは、注意をするためというより、本当に付き合っているのか知りたかったんだと思う」


「好奇心で呼び出されたんですか!?」


 瀬戸内さんが、暇な会社ですねと皮肉で言った言葉が思い出される。


「好奇心というか……、前々から心配されてたんだよ。

結婚はまだなのかって。

やっぱり上の世代は、結婚しないと一人前じゃないって考えが根付いてるんだ。

だから、付き合ってるなら早く身を固めろって、助言というかなんというか……」


 部長はとても言いにくそうに言った。


私たちはまだ付き合ったばかりで、結婚なんて考えてもいなかったからドキリとした。


「……それで、部長はなんて答えたんですか?」


 胸がどきどきいっていた。
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