社内恋愛なんて
「まだ付き合ったばかりなので、彼女が結婚したいと思うまで待つつもりですって言った」


 どうしよう、心臓が口から出そうなほどドキドキしてる。


え……それって、部長は私と結婚する気があるってこと? 


嬉しくて言葉が出ない。


 黙り込む私に、部長は慌てて言った。


「上から言われてるからって焦ってるわけではないからな。

プレッシャーに感じる必要なんてないから。

俺は本当……待てるから」


 部長は耳を赤くさせていた。


なんだろ、これって、プロポーズに近いんじゃ……。


いやいやまさか、付き合ったばかりだし。


付き合い始めの、結婚したいねって話は、ほとんどが男性のリップサービス。


部長に会った途端、枯れたはずの花畑が一斉に開花して、自分に都合よく解釈してしまっているんだ。


「さて、仕事に戻らないとな」


 部長は照れ臭そうに私に背を向けて、プレゼンルームから出ていった。


一緒にオフィスに戻ったらまた噂されそうなので、私はもう少し時間を置いてから向かうことにした。
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