社内恋愛なんて
私と部長が付き合っていることは、いつの間にか会社中に知れ渡っていた。


一日でこんなに広まるなんて驚きだ。


これはきっと、相手が部長だからだ。


本人は全く自覚がなさそうだけど、かなりの人気者。


部長に好意を寄せている女性がたくさんいたから、その衝撃はとても大きいものだったんだろう。


 でも、あからさまに嫌がらせされるとか、無視されるといったことはなかった。


そこら辺はみんな大人で、すぐにいつも通りに接してくれた。


部長と付き合ったら大変だろうなと思っていただけに、不安が杞憂に終わってほっとする。


 定時前に新卒採用会場前にもう一度顔を出すと、瀬戸内さんがこそっと私に話しかけた。


「部長と付き合ってることがバレて、なんか意地悪とかされませんでした?」


「ああ、はい。ちょっとよそよそしくなったなって感じる人はいましたけど、あからさまに敵意を示してくる人はいませんでした」


「そうですか、良かった」


 瀬戸内さんはほっとして顔を緩ませた。


私のことを心配してくれていたことが伝わってきて、とても嬉しかった。


瀬戸内さんも部長のことが好きだったのに。


大人だなあ、と同い年なのに感心してしまう。
< 217 / 359 >

この作品をシェア

pagetop