御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
店での買い物を終え、ランチを済ませて少しゆっくりした後、私を美容室で降ろすと怜人さまは「支度をして迎えにくるから」と、一旦マンションに戻った。
ひとり残された私は……エステで全身を磨かれ、そのあとプロの手によって仕上げられていった。
「お待たせしました」
夕方、迎えに来てくれた怜人さまは、すでにタキシード姿だ。美容室のソファに座り、なにかに思いを巡らせている。
いつもは優しげなのに、あまり見たことがないほど強い眼差し。男らしいその横顔にしばし見とれていた私に、フッと視線が向けられる。少し離れた距離で、言葉もなく視線が絡まった。
私の方も、今日はメイクも髪型も、何もかもいつもと違う。つけまつげまでつけられて、別人のように仕上げられている。鏡でみた自分の姿に、自分でも戸惑ってしまうほどだ。
おかしくないかな。
怜人さまはどんな風に思っているんだろう。
問いかけるような視線を向けても、怜人さまはだまって見つめるだけ。
やっぱり私には似あわないのかも……。
そう不安に思っていると、不意に立ち上がった怜人さまがこちらに歩み寄ってきた。
「驚いた。似合うとは思っていたけど、まさかここまでだなんて……」
そう言いながら、手の甲で私の頬をそっと撫でる。
気に入ってくれた?
ホッとするのと同時に、彼のその仕草ひとつで、たちまち眩暈に似た衝動が体中を駆け巡る。
「言葉にできないくらい素敵だ。……キスしてもいい?」
驚いて顔を見上げた私の答えを待たずに、怜人さまのくちびるが頬に触れる。
鼻腔をかすめる魅力的な香りが、また私の頬を染めた。