御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
今日のパーティは、新郎新婦の友人を集めた内々のものらしい。
けれど、ホテルのバンケットルームを貸し切っての立食パーティは、華やかに着飾った人たちでにぎわっていた。
新郎は怜人さまの大学時代の友人だ。
彼は英国に留学していた時に親しくなった日本人で、今は企業売買なども扱う、外資系ファンドに勤めているという。
怜人さまは彼にお祝いの言葉を伝えると、隣にいる新婦に微笑みを向ける。
「おめでとう。本当に美しい奥さんだね」
隙のない笑顔で怜人さまに言われ、新婦が反射的に頬を染めている。
そんな彼女に愛しさを隠せない様子で寄り添う新郎に、自然に笑みがこぼれた。
幸せの絶頂にいる女性は、本当にきれいだ。愛する人と結ばれる幸せは、きっと何にも代えがたいものなのだろう。
「そういうフィルだって、すごくきれいな人を連れているじゃないか。いったいどういう人なんだ?紹介してくれよ」
「……まだ秘密だ。そのうちにまたゆっくり紹介するよ」
そう言って怜人さまは、私の肩を抱く。まるで誰にも触れさせないよう、隔離でもするように……。
秘密……。そうだ。私は偽物だ。
秘書も婚約者も、本当なら可憐さんがつとめるはずのもの。勘違いしてはいけない。
そう自分に必死で言い聞かせても、目の前にいるひとの横顔は、そんな警告を一瞬で振り払うほど魅力的だ。
一瞬曇った表情を敏感に感じ取った怜人さまが、心配そうな顔で私を覗き込む。
「大丈夫?……疲れたかな。今日は僕のわがままで、忙しくさせてしまったから」
「大丈夫です。……でも少しだけ、お化粧室に行ってきますね」
心配する彼に笑顔をむけて、私はひとりパーティ会場を後にした。