御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
華やかな空間から逃れてひとりになると、化粧室の鏡の前でようやくひと心地つく。

私が粗相をしては怜人さまが恥をかく、と気を張っていたせいか、一気に力が抜けて鏡の前の椅子に座りこんだ。


すごく緊張する……。


やっぱりというか当然というか、怜人さまはとても目立つので、行く先々で声をかけられる。

その都度、丁寧な対応をする怜人さまをすごいと思う反面、そんな彼に伴う私に関心が集まることが、実のところかなり負担ではあった。

綺麗にしてもらったヘアメイクとこのドレスで、何とか勇気を奮い立たせているといった感じだ。



あの喧噪のなかにすぐ戻るのも気が進まず、手持無沙汰にメイクをなおしていると、背後に誰かの気配を感じた。

振り向くと、セクシーなドレスを身にまとったレイチェルが、深刻な顔をしてこちらを凝視している。



どうして彼女がこんなところに……。

イギリスに帰国したんじゃなかったの?


驚く私に、レイチェルは睨みつけるような視線を向けている。


『こんばんは。レイチェルさんも来られてたんですね』

『私がまだ日本にいてびっくりした?あともう少しいることにしたの。まだフィルとちゃんと話もできていないし』


努めて和やかな挨拶をしたのに、彼女の方は攻撃的な態度を崩さない。

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