御曹司は身代わり秘書を溺愛しています


『何のことですか』

私が可憐さんの身代わりになっていることを、レイチェルさんは知らないはずだ。

私がかわいそうな子だというのは、一体どういう理由で……。


『あなたのお父様の会社、倒産したんですってね。なんでも新薬を開発したとかしないとか……。だけど、結局新しい発見はあなたのお父様がしたんじゃなくて、別の人がしたんでしょ。だから信用を失って、取引先がすべて手を引いたって』


レイチェルさんの口から信じられない言葉が吐き出され、一瞬放心状態になる。

あの研究を成功させたのは、間違いなく父だ。康弘さんの献身的な手助けがあったとはいえ、元々のロジックを確立したのは父だ。

けれど私は、今こんな場所でレイチェルさんと言い争うつもりはなかった。

こんなバカげた話に反論することすら、父の研究を冒涜する。

でも、なぜ彼女は父のことを知っているの?

様々な疑問が頭に浮かぶ。

一方彼女は、私が全く言い返さないのをいいことに、畳みかけるように続けた。


『もともと、あなたのお父様の会社の企業買収にフィルが関わっていたそうよ。あなたをそばに置いているのだって、その方がなにかと都合がいいからだろうって、兄が言っていたわ』


え?今なんて言ったの?

彼女の言葉に、頭の中がざわりと嫌な音をたてた。

父の会社の買収?それに怜人さまが関わっている……?

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