御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
『……私、その話を聞いてようやく納得したの。だって今までどんな美女にも見向きもしなかったフィルが、あなたみたいな子を本気で相手するはずないもの』
興奮したレイチェルとは逆に、私は変に冷静だった。
頭の中が空っぽになって、体温がどんどん下がっていくような感じだ。
同時に、時々怜人さまが朝から晩まで数字が羅列した複雑な書類を作っていたことを、今更のように思い出す。
さまざまなことが交錯してぼんやりする私に、レイチェルはさらに苛立ちをぶつける。
『ちょっと!聞いてるの?』
『怜人さまが……大企業のCEOが、なぜ企業買収にかかわってるんですか』
ようやく口にした疑問に、彼女はあからさまに鼻白んだ顔をした。
『だってそれは、フィルの仕事でしょう?……まさか、知らない?だって、あなた秘書でしょう!?』
話にならないといった風情で肩をすくめ、背の高いレイチェルが顎をあげて私を見下ろす。
『『Teddy 's Company』日本支社CEOの仕事は、各部門の統括と日本でのプロモーションが主な仕事だと聞いているわ。
彼の能力には見合わない。だってメインの仕事は本社の資産運用をする部門の責任者だもの。……あなたには難しすぎて分からないかしら』