御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
くすくすと笑いながら、レイチェルは固まったままの私にきれいな顔を近づける。
『それじゃ、うんと簡単に言ってあげる。あなたのパパの会社が作った薬を、手に入れたい英国資本の製薬会社があった。だからフィルが業務提携に見せかけた企業売買に持ち込もうとした。そうしたら、先を越されて……』
『そんな……』
レイチェルの言葉に、ざっと血の気がひいた。
怜人さまがうちの会社を狙っていた?それも、私たちを騙そうとした……?
あまりのことに、なにも言葉がでてこない。
ただ呆然と立ちすくむ私に、勝ち誇ったようなレイチェルの視線が突き刺さる。
『あなたのことなんて、フィルが本気で相手にするわけないでしょ。あなたに利用価値があるからそばに置いた、ただそれだけのこと。それに話が進めば私がフィルの婚約者。目障りだから、さっさとフィルの前から消えてちょうだい』
背後からは、まだ辛辣な言葉を叩きつけるレイチェルの声がする。けれどこれ以上、彼女の話を聞く勇気はない。
彼女の高い声はまだ何かを叫んでいたけれど、振り向きもせず化粧室を後にした私には、もうなにも頭に入ってこなかった。