御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
「……先生にそんなことを……」
まるでペテン師のようなやり口に少しあきれて言葉を失う。怜人さまはいたずらっ子のように笑いながら「会いたかったのは嘘じゃないから」と小さな声で言った。
「あなた、先生にはきちんと報告をしていたんですね。住所が分かったから行ってみたら、あなたはベーカリーで働いていた。とてもおいしいパンを作るお店でしたね」
「もしかして、お店にも来られたことがあるんですか!?」
思ってもみなかった事実に、半ば呆然と怜人さまを見つめる。
「あなたがいない時間を見計らって時々お邪魔していました。とてもいいご夫婦だったから安心していましたが、ご主人の病気はお気の毒でした。それで仕事が無くなったあなたが心配で……。六車さんにも手伝ってもらって、何とか僕の存在に気づかれないよう、メール室の仕事をあなたに紹介したんです」
怜人さまの衝撃的な告白に、私はしばらく何も反応できずにいた。が、ハッと気づいた事実に思わず怜人さまの腕をつかむ。
「父に会いたいから私を探したんですよね?なのに、どうして今まで私に何も聞かなかったんですか?」
怜人さまが父の発明のために尽力してくれていることが分かった今、私に騙されていたなんて思いは少しもなかった。