御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
レイチェルが言ったように、父の居場所を聞き出すために利用しようとしたのなら、別にそれでもいい。
けれど、怜人さまは父のことを一切口にしなかった。
それどころか、そんなこととは関係なく、いつも私を優しく気遣ってくれる。
今思えばめちゃくちゃな可憐さんとの契約だって、『きっぱり断るつもりった』と言っている怜人さまの立場で考えれば、別にしなくてもいい契約だ。
「本当のことを言うと、お父様の会社のこととあなたを探したことはあまり関係ありません。手伝ってもらった六車さんにも適当なことを言ったし、葉山化学の経営状態のことでハリーに相談した時も、詮索されるのが嫌で適当にごまかしました。それが災いして、あなたにこんな怪我をさせてしまったのだけど」
怜人さまが不自然に私から目を逸らした。少しの沈黙のあと私の両肩をつかむと、強引なほど強い視線で私を捉える。
「もう一度会いたかったから。だからあなたを探した。最初から、あなたとホテルの屋上で出会った時からあなたに惹かれていました。とても強い引力で」
「怜人……」
私だって同じだ。あの日から、怜人さまのことが忘れられなかった。
もう一度逢えたらと、何度思ったか分からない。
「あなたといると、びっくりさせられることが多くて、とにかく落ち着かない。それに時々、今まで知らなかった感情があふれて、どうしようもなく苦しいことがある。これがどういうことか分かりますか」
「あの……なにかご迷惑をおかけしているのでしょうか」
まさかまた何か迷惑をかけてしまったのでは……とおびえる私に、怜人さまはちょっと不機嫌な顔をする。
「まったく、あなたときたらこの期に及んでその答えですか。本当に報われない。……だけど、あなたはそれでいいんだ。いつも誰かのことを思い、自分のことは後回し。本当に危なっかしいけど、これからは、僕が全部受け止める」
「怜……」
言いかけた言葉は、私を強く抱きしめた怜人さまにかき消される。
「理咲……ぼくのそばに、ずっといてください」