御曹司は身代わり秘書を溺愛しています


体がふらついて、バランスを取ろうとした瞬間、上空を渡る風に煽られる。

羽織っていたシルクのストールが攫われた。波打つように流れて、光の渦に吸い込まれていく。

まるでストールと光に誘われるように、反射的に手を伸ばした。


このままでは、落ちてしまう——


そう思った瞬間、強く腕を引っ張られる。

そして次の瞬間には、広い胸の中に包み込まれていた。
温かで、揺るぎなくて、何故だか安心してしまう力強い腕。

そして腕と共にふわりと体全体を包み込む、男らしい香りに心臓が跳ねあがる。

そのまま倒れる衝撃を感じたものの、しっかりした体に抱かれているせいでどこにも痛みは感じない。


「……間一髪でしたね」

「……っ。あ、あの……」


何が何だか分からない。包み込まれたまま、私は体の上に倒れ込んでいる。

それに……私の体、誰かとかなり密着している。

何とか起き上がろうとするも、抱えられた腕の力が強くて身動き取れない。

反射的に抗うと、頭の上から、ため息まじりの優しい声が落ちてきた。



「ごめんね。だけど、もう少しだけ大人しくしてください。ここはまだ危ない。今君を離してしまったら、落ちてしまいそうだ」

< 13 / 242 >

この作品をシェア

pagetop