御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
体がふらついて、バランスを取ろうとした瞬間、上空を渡る風に煽られる。
羽織っていたシルクのストールが攫われた。波打つように流れて、光の渦に吸い込まれていく。
まるでストールと光に誘われるように、反射的に手を伸ばした。
このままでは、落ちてしまう——
そう思った瞬間、強く腕を引っ張られる。
そして次の瞬間には、広い胸の中に包み込まれていた。
温かで、揺るぎなくて、何故だか安心してしまう力強い腕。
そして腕と共にふわりと体全体を包み込む、男らしい香りに心臓が跳ねあがる。
そのまま倒れる衝撃を感じたものの、しっかりした体に抱かれているせいでどこにも痛みは感じない。
「……間一髪でしたね」
「……っ。あ、あの……」
何が何だか分からない。包み込まれたまま、私は体の上に倒れ込んでいる。
それに……私の体、誰かとかなり密着している。
何とか起き上がろうとするも、抱えられた腕の力が強くて身動き取れない。
反射的に抗うと、頭の上から、ため息まじりの優しい声が落ちてきた。
「ごめんね。だけど、もう少しだけ大人しくしてください。ここはまだ危ない。今君を離してしまったら、落ちてしまいそうだ」