御曹司は身代わり秘書を溺愛しています


呼び鈴を鳴らしお冷を貰うと、陸に飲ませて唇を冷やす。

まったく、本当に手がかかる……と思いながら、幼いころからの癖で、陸の癖のある柔らかな髪をなでた。

陸の顔、とても久しぶりに間近で見たけれど、顔色が良くない。

それに、もともと小さめの顔がますます尖り、心なしか肩幅も一回り小さくなった感じがする。


「陸……ちゃんとご飯食べてるの?顔色が悪いけど、体調はどう?」


「大丈夫。最近、研究室に泊まり込むこと多くてさ。教授の実験、丁寧にやらなきゃすぐ失敗するから、ほかのやつじゃできなくて、俺ばっかり指名がくるから」


女の子のように繊細な顔立ちは、小さな頃私と母で女の子の服を着せて遊んだ、当時の面影のままだ。


「髪……ちゃんと切らなきゃ。お金ある?お姉ちゃん、お給料入ったから少し余裕あるよ」


そう言って財布を出そうすると、陸は眉根を寄せて拒絶する。


「女の人の方がお金かかるだろ。俺は男だし、こんなの自分で切るよ」


そう言いながら、陸はぎこちなく私の全身に目を走らせる。


「だけど姉ちゃん、変わったな。なんかすごく……」


そう言いかけたところで、店の女性に案内されて怜人さまが部屋に入ってきた。

私に目で微笑みかけたあと、「お待たせして申し訳ありません」とスマートに陸に手を差し伸べる。


< 131 / 242 >

この作品をシェア

pagetop