御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
陸はとっさにそれに応えようとしたものの、思い直したように手を引っ込める。
「すみません。握手は、まずは話を聞いてからでもいいですか」
相手に気圧されまいと意図的に鋭くした目つきで、陸が背の高い怜人さまを見上げている。
対する怜人さまがあまりにも堂々としていて、かわいそうだけど、陸の幼さが更に目立つ。
「陸、失礼よ。ご挨拶はちゃんとしなさい」
「姉ちゃんはだまってろよ。俺、今日はこの人と話をしに来たんだから」
初対面から鼻息の荒い陸の様子に私がハラハラしている間も、怜人さまは一向に揺らぐことなく余裕の態度だ。
「そうだな。僕も今日は君と話をしに来た……。陸君の言うとおりだ。今日はあなたは大人しくしていてくださいね」
「怜人……」
目の前の美麗な外国人を、れいと、と呼んだ私に陸は軽く目を見張る。
が、気を取り直したように姿勢を正す。
「あの、今日はあなたと姉ちゃ……姉の関係をはっきりお伺いしたくて」
「僕の方もはっきりさせておきたかったから丁度いいよ。だけどまずは席に着かないか。店の方の都合もある」
注文を取りに来たらしい女性が居心地悪そうにドアを開けたのに気づき、陸も顔を赤くしながら腰かけた。