御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
当の怜人さまは余裕の表情だ。いつもより少し華やかな、薄いピンクの細いストライプのシャツには、今朝私が選んだ光沢のあるラベンダーのネクタイを合わせている。

テーブルの上で組んだ両手は、いつも会議の時にそうしているように、彼が集中して話を聞いている時の癖。

陸の方は気圧されまいと力が入った背筋がピンと伸びて、それが却って彼の緊張を物語っている。

姉としては、とてもハラハラしてしまう場面だ。


「単刀直入に伺いますけど、姉とはどういうご関係なんですか」


そう切り出した陸に、怜人さまの視線が少し真剣になった。


「いきなり失礼よ、陸」


唐突な陸の問いかけに、私は慌てて間に入る。

そもそも怜人さまとの関係は、先に私と可憐さんが持ち出した、あの滅茶苦茶な契約が発端になっているのだ。

だから今思えば、むしろ私のほうが『どういうつもりであんなことを』と言われても文句は言えない立場だ。

今、怜人さま家で暮らしていることだって、私が住んでいたおんぼろアパートが火事になり、お金もなくて行くところがなかったのを怜人さまが助けてくれたのがきっかけだ。

……その後、彼から離れがたくなってしまったのが、現状だけれど。


怜人さまは顔色ひとつ変えず、陸にまっすぐな視線を向ける。

「僕の方も単刀直入に言えば、僕たちは現在恋愛中だ。僕はとても真剣だし、理咲もそうでいてくれると思っている」


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