御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
「本当だったら俺たちみたいな一般庶民が出会うはずない人だって言ってんの。いうなれば世界レベルのセレブだよ。今は日本にいて、普通に生活してるかもしれないけど、最終的には向こうで爵位を継いで、俺たちには想像でもできない世界で生きていくことになる。絶対無理だと思うけど、万が一結婚できたとして、姉ちゃん、そんなとこでやってけんの?」
畳みかけるように陸に言われ、言葉を失った。
セレブ……?
そう言われてみれば確かにそうだ。怜人さまは何百年と続く英国貴族の末裔。ゆくゆくはお父様のあとを継いで、母国で暮らすことになるだろう。
王室のある大国で、貴族社会での生活がどんなものなのか、私には想像もつかない。
何もかもが私とは違うのだ。そう思うと、急に不安と心細さが押し寄せてくる。
「ったく、そういうことも考えないで西条さんとつきあってるのかよ。本当にそういう状況判断がにぶいとこ、もういい年なんだから何とかしろ。分かっただろ、俺たちとは住む世界が違う人なんだってこと」
押し黙った私に陸がホッとしたような表情を浮かべた。そして、「そういうことなんで、やっぱり姉との交際は——」と言いかけた言葉を、「理咲」と私を呼ぶ怜人さまの少し強い口調が遮った。