御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
怜人さまはそう言いながら私の髪に軽く口づけると、真っ赤になって固まる陸を横目に「失礼」といって席に戻った。
こんな恥ずかしい場面を陸の前で繰り広げたというのに、恥ずかしいどころか胸の中が幸せで満たされてしまう。怜人さまはというと……少しはにかんだ表情で目を伏せている。その顔が少年のようで、また胸がときめいて——。
「あぁもう!……勝手にしろっ」
長く伸びすぎた髪を両手でわしゃわしゃさせた陸は、大きくため息をひとつつくと、何とも言えない困惑の表情を私たちに向けた。
「ま、まぁ、ふたりの気持ちが真剣なんだったら、俺が口出す問題じゃないから。……でも西条さん、姉のことを傷つけるのだけはやめてもらえますか。この人、あんまり男に免疫ないんで」
陸ったらなんてことを、と私が抗議する前に、怜人さまが真剣な眼差しを陸に向けた。
「それは十分承知してる。……傷つけたりしないよ。大切に愛するつもりだ」
「信じていいですか。……つか、信じるしかないですけど」
半ば投げやりに肩をすくめる陸に、怜人さまは初めての穏やかな眼差しを陸に向ける。
「ありがとう。約束する。何があっても、彼女だけは守るよ。……じゃ、次は僕の番だな」
そう言って、怜人さまは目を細めながら陸を見据える。さっきとは違う冷やかな表情に、意味もなく緊張が走る。