御曹司は身代わり秘書を溺愛しています

「ほんとか!?姉ちゃん、ホントにそうなのか!?」


「そんな大げさなことじゃないの、陸。本当に偶然いろんなことが重なって……」


本当は偶然なんかじゃなく、怜人さまの計画通りにメール室の面接を受けにきたんだけど。

ややこしくなりそうだから、ここは黙っておこう。


「大げさなんかじゃないさ。幸い僕は違ったが、世の中には卑劣な男だって多くいる。例えば立場の弱い彼女を、権力を使って思うとおりにしようとする輩だって、掃いて捨てるほどいる。彼女は君の学費のために、そんな危険に身をさらそうとしたんだ」


そう淡泊に放った怜人さまの言葉に、思わず背筋がぞっとした。あの時の自分の頼りない立場を、今更のように思い知らされる。

もしも誰かがお給料を払う代わりにと無体なことを言ってきたら?

もちろん、言いなりになったりなんてしない。でも……どうしてもお金が必要だったことは事実だ。

それにアパートが火事にもなった。怜人さまがいなかったら、一体どうなっていたんだろう。


「姉ちゃん、なんで……。いや、そんなこと、分かりきってるよな。全部おれのためだ。俺に甲斐性がないから、だから」

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