御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
「き、君が悪いんだからな。私は娘に……」
「どんな理由があっても、新しい命を身ごもっている女性に手を上げるなんて、やってはいけないことではないですか」
「なんだとっ。自分の娘が間違ったことをして、咎めるのは親の責任だっ」
「愛する人の子供を身ごもることが間違ったことですか。本当ならとても幸せな、祝福されるべきことだと思います。だから可憐さんは、あなたから逃げたんです。お腹の中の小さな命を守るために」
ハッとした表情の可憐さんが顔を上げた。私に近寄ると、手をぎゅっと握る。
そして「ずっと連絡しなくてごめん」と小さな声で詫びた。
どんな事情があったのか分からないけど、可憐さんが過ごした二か月間も、私と同様に様々なことがあったのだと直感する。
「い、一体どういうことなんだっ。分かるように説明しろっ」
京極氏はもはや半狂乱だ。
自分の娘が身ごもった相手が世界的企業の御曹司ではなく、名もないミュージシャンの卵だと聞かされた上、狙っていた玉の輿も夢と消えた。怒りの矛先が向かう相手は、もはや私にしかない。